香りの分析 〜fragrance analysis 〜
オー ド ジャンシャンヌ ブランシュ、“ジャンシャンヌ”とは日本名のリンドウ。白いリンドウの花に光をあてたこの香りは、動的要素が廃された、静寂の美を湛える香水である。
その香りはクリーミーでマット、パウダリーな質感があるものの、ハーブのような苦味を含む清涼感と石鹸様の清潔感、そして下から湧き上がる、雄大な自然を感じさせる。
まるで早朝の森林に立ちこめる朝靄のようなその香りは、身に纏う者をその幻想的なミストで包み込み、この上ない「癒し」を与えてくれる。ただただその香りを受け止めるだけで得られる恍惚感がこの香りの醍醐味であろう。
“白いリンドウ”が決して華やかで誰もが知るポピュラーな花ではないことからも、この香りの特性を捉えることができるのではないか、奇しくもエルメス専属調香師Jean Claudia Ellenaが「繰り返し使いたくなる香り」と評するように、瞬時に何かしらの強いインパクトと共に人々の記憶に刷り込まれる類の香りではないが、なぜか惹かれ、繰り返し使うことで、すっかりジャンシャンヌブランの香りの世界に嵌り込んで行く、そういった引力を持った香水なのである。
ハーブとして知られるリンドウの根の苦い香りのトップノートは、柑橘系の香気とは別にハーバルでフレッシュな印象を与える。そこにホワイトムスク、ヴァニラ、アイリス、白檀等、微かな甘みと温もりが加わり、よりマイルドな印象に変わっていく。
オールシーズン、オールシーン対応であるが、ゆったりとくつろぐ休日にもお勧めしたい香り。群生せず1本1本咲くリンドウのように、静かで美しいオード ジャンシャンヌ ブランシュの世界をぜひ日常に感じて頂きたい。
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