香りの分析 〜fragrance analysis 〜
グレー フランネル、その香りには目を閉じ、自分自身の"センス(感覚)"を研ぎ澄ますほどに感じられる恍惚感が存在し、そして何よりも唯一的に美しい香水である。
男性用香水として、男性的な側面を残しながらも香水としての芸術性、そして清潔感や心地良さというソフトな要素を兼ね備えた香りは稀有だ。だからこそグレー フランネルは唯一的であり、その香りが醸し出す独特の優しさや温かさは、女性がパートナーや特定の男性に対して感じる安心感に似ているのだ。
香調としてのキーワードはブルー、パウダリーフラワー、アーシーそしてアロマティック。香り全体がうっすらと青みを帯びているような印象であるが、決して空や海のような爽やかな青ではなく、少々くぐもった幻想的で落ち着いた青だ。
その正体はバイオレット(すみれの花)の青い香りなのだが、その香気がオーラのように漂い、香り全体を上品で洗練された印象に。それに続くのが、オリスやベチバーなど植物の根の温かさとオークモスやシダーなど森林様のクールな香りが融合した心地よいノート。そう、それこそが包み込むような優しい温かさを持ったグレイフランネルのメインノートなのである。
さらに驚くべきことに、このグレー フランネルは70年代に発売されて以来、欧米では大きな成功を収めていたことである。現代において通用するナチュラルでシアーな"センス"は発売当時においては時代を先取りしたものであったはずなのだ。
グレー フランネルは現代のナチュラル志向に沿った香りであるが、決して凡庸にならない確固たる"センス"を持った香り。それはまさに、内面を確立したリアルジェントルマンに相応しい香水なのである。
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