香りの分析 〜fragrance analysis 〜
アナーキストのボトルは銅製。工場にあるオイル缶のような形をしたボトルは独特の鈍い輝きを放ち、退廃的なイメージを目にする者に与える。
無政府主義者=アナーキストの意を持つ香りは、ボトルデザインのインパクトとともに、規制の概念に反抗する前衛的思想という強烈なメッセージ性を持っているのである。
ピリッとした柑橘系果実の香りで幕を開けるアナーキスト。すぐに清清しい木々の香りに転じるが、どこか硬質でメタリックな香りを伴う。続くベースノートは樹木とムスクが豊かで温かい香気を放ち、ミドルノートの硬質な香りとのコントラストがこの温かさを際立たせている。
アナーキストの中心となるこのコントラストは、金属の冷たさや硬さの中にも、その独特の色から温かさを感じさせるコッパー(銅)と似ている。そしてその温かさはアナーキストに末枯れたような風合いを与え、まるで紅葉が色づき、散るまでの移ろいのように、香りに懐の深さをもたらしている。
あらゆる規制に囚われない、真の自由は自分自身を解放することでしか得られないという思想は、自分自身への強固な信頼がなければ成り立たない。依存心のない、強い男性の肖像を描いたキャロン、アナーキスト。重厚感のある香りは秋・冬に最適なクラシカルな香りでもあり、哲学を持った硬質の男性に身に纏って頂きたい逸品です。 |