香りの分析 〜fragrance analysis 〜
石壁の町並み、古代遺跡に咲き誇る幾種ものハーブ、街頭から漂うスパイスの香り。エキゾチックなトルコの風景を彩る様々なシーンを描いた温かく、スパイシーな香りは花の香料を一切使用しないことにより、トルコ独特の乾いた雰囲気を際立たせ、身に纏うものにリアリティを感じさせてくれる。
薬草を煎じたような香りで幕を開けるヤタガン、西洋から見た中東のエキゾチズムを象徴するかのような強い香りは、フェンネル、バジル、ゼラニウムの葉など、たくさんのハーブが調合されているが、その中心となるのはアルテミシア、日本名でニガヨモギと呼ばれる香草である。その名の通り強い苦味があるが、温かく深みもあり、ヤタガンの香り全体にくすんだような、マットな印象を残すのである。この薬草のような強い香りは時間の経過とともに姿を変え、深みを増す。針葉グリーンの爽快感に、樹木の豊かさが加わり、そしてなによりもラストノートの動物的な温かみがこの薬草の香りに命を与えるのである。
「ヤタガン」とはトルコの伝統的な剣の名前であり、オスマン帝国時代の軍人のサーベルであったが、武器としてだけでなく、現在も芸術品としてその姿を残すトルコ文化を象徴するアイテムである。そのような「ヤタガン」という名を拝する香りは、悠久のオスマン帝国の旅へ身に纏うものを誘う香水であるとキャロン自身が表現するように、ミステリアスでエキゾチックなトルコを凝縮した香りなのである。
非常にロングラスティングであり、スパイスや動物性香料も含むことから、オリエンタル系に近いシプレ調に仕上がったヤタガンの香りはダイナミックでありながら肌に馴染みやすく、「男のロマン」を表現するのに相応しい香りです。 |