香りの分析 〜fragrance analysis 〜
1974年に発売されたエルメス・アマゾンは、フローラルグリーン調の香水であるが、植物の葉やヒヤシンスなどに代表されるフラワーの中でも爽やかなグリーンノートを持つ香料を主体とする「フローラルグリーン調香水」の大半は、“爽やか” “アウトドア” “マニッシュ”というイメージを前面に出した香りが多く、“女性らしさ” や“奥深さ”といった要素は持ち合わせいない場合が多い。
しかしながら、アマゾンは青みがかったグリーンの爽やかな香調を持ちながらも、成熟した女性の強さとしなやかさを想起させる、味わい深い大人のフローラルグリーンノートなのである。
ギリシャ神話にある「アマゾネス」という女性だけの戦士部族からインスピレーションを得たと言われているが、女性戦士という言葉から創造される荒々しさはアマゾンの香りにはなく、女性の芯の強さにも似た静かな力強さがアマゾンの香りには宿っている。
アマゾンの調香は素晴らしい。爽やかなグリーンノートに、意識的にふくよかで豊かな香りを合わせることで平面的な香り立ちから、広がりと奥行きのある多面的な香調となった。
トップノートからラストノートまで、一貫して青いグリーンノートを持つ香料が含まれているが、そこに瑞々しいフルーツ(カシス)、豊かなフラワー(ジャスミン・ローズ)、温かみのある樹脂(アンバー)が加わることで、豊かで奥深いフローラルグリーンノートを実現したのである。
身に纏う者が、変化する豊かな香りを楽しむことができるアマゾン。エルメス香水独特のエレガンスも感じられるアマゾンは、芯の強い成熟した女性にこそ身に纏っていただきたい逸品です。
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