香りの分析 〜fragrance analysis 〜
ミュゲドボヌール。幸せを運ぶスズランという名の香りは、身に纏う人だけでなく、周囲の人々をも幸せにする至福の香り。
フランスでは5月1日にミュゲ(スズラン)の花束を贈られると幸運になると言われ、家族や親しい人々に花束を贈る風習がある。中世において、5月は婚約期間の始まりと言われ、婚約者の家のドアにスズランを掛ける習慣があった。その後シャルル9世がスズランを贈る日として5月1日を制定したのが始まりである。
そんなロマンチックな5月1日をモチーフにした香水を創出したのは、香水専門メーカーとして1世紀以上の伝統と歴史を持つ、キャロン。伝統的な5月1日の風習をテーマにした香水を創りたいという熱意から、1952年に創られたミュゲドボヌールは“幸福を呼ぶ香水”と言われ、発売以来たくさんの人々に愛され続けている逸品。
その香りは別名“谷間のユリ”と呼ばれるスズランのように、密やかに咲き誇り、慎ましくも存在感のある香り。華美で主張しすぎる香りとは程遠い可憐な印象の香りは、スズランを中心に、ジャスミン、ローズ、ライラック、ヘリオートロープなどがブレンドされ、透明感と豊かさを兼ね備えた上質の香りに仕上がっている。トップからラストノートまでの香りの変化は少なく、ほど良い甘み含んだスズランの香りが、ゆったりと漂い続けるのが特徴。
一般的にスズランをモチーフにした香りは、若々しさを演出するためか、春の花や柑橘系の香りと調合され、青みを残したフレッシュな香調となりがちだが、ミュゲドボヌールはジャスミンやローズなどの深く豊かな香りと調和し、成熟した大人の女性を想わせる。
慎ましくも、しっかりと存在感を放つ、しなやかな女性に捧げる幸せの香水、ミュゲ ド ボヌール。
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