香りの分析 〜fragrance analysis 〜
なぜチュニジアなのだろうか?それは「地中海の庭」が、チュニジア生まれのエルメス専属ディスプレイデザイナーLeila Manchariが故郷に有する、叙情的で美しいプライベートガーデンにインスピレーションを受けて創造された香水だからである。
白亜のガーデンから見渡せる穏やかな海、優しい海風や樹木に降り注ぐ太陽の光、そんな楽園のような庭の光景を香りに込めたことが、エルメス庭シリーズの原点にもなっているのだ。
では、調香師Jean Claude Ellenaはこの「地中海の庭」をどのように描いたのだろう。
彼が得意とするナチュラルで透明感溢れる調香はそのままに、まるでエデンの園のように、豊かな自然とエキゾチシズムが共存する庭の空気感を、フィグリーフ(いちじくの葉)という独特の香気を持つ香料を象徴的に配置することで実現したのである。
フィグリーフはその名の通りリーフ系香料であるが、爽やかなだけでない、独特の青い香気を持っている。また、Milky Sapと呼ばれる樹液様のクリーミーな質感や、スイートガーデンフレグランスとも言われる微かな甘みも内包した非常にコンプレックスな香り立ちで、アフリカ大陸のアラブ諸国であり、地中海沿岸のヨーロッパ諸国の影響受けるチュニジアの風土を表現するには、いちじくが地中海沿岸原産の植物であるという点も合わせて、偶然の産物ではないように思える。
そしてフィグリーフの周囲にはマンダリンオレンジ、ベルガモット、シトラスの柑橘系果実で彩られ、降り注ぐ太陽のように明るいイメージに。さらにサイプレス、ジュニパー、レッドシダーなど、個性的でクールなグリーン様の香気が加わることで、洗練された印象に仕上がった。
紺碧の空に映える白壁の建物、チュニジアンブルーと評される鮮やかなスカイブルーの扉が随所に施されたエキゾチックな街並み、コバルトブルーの海に映えるセイリング。
どこを切り取っても青く美しい風景に身をゆだねる、チュニジアンブルーの世界に誘われてみませんか。 |