香りの分析 〜fragrance analysis 〜
「それ」は厳しい冬に突然の終わりを告げる。外に出ると生暖かい空気を含んだ春の風が頬をかすめ、目を閉じると野に咲く花々、太陽の光を浴びて輝く芝の大地、草の青く渋い香りを思い起こさせる。「それ」は類い稀な才能を持った女性調香師が創造した緑の風 ヴァン ヴェール。
1947年、華やかなフローラルブーケや甘く妖艶なオリエンタルノートが女性用フレグランスの主流であった当時、その流れに反逆するように強く、むしろ渋いとさえ表現できるグリーンノートを中心とした香水が発表された。緑の風(ヴァンヴェール)と名づけられたその香りは、奇才の女性調香師Germaine Celleerによって創られ、マニッシュな女性像を提案したが、商業的にはあまりにも極端な香りであったため、当時のマーケットにはあまり浸透しなかった。しかしながら彼女のスピリットは、1970年に発売されたシャネルNo19や79年に発売されたバルマン・イヴォアールに時を越えて息づき、現在ではフローラル・グリーンノートというひとつのジャンルを確立している。
Germaine Celleerは当時、ピーチとチュベローズを多用した蒸せるほど甘い「フラカ」、非常にスモーキーで刺激的な皮革の香りが中心の「バンディ」も創造している。どの香りもとても極端な特性と個性を持っており、まるで中庸で流行を狙った香りに挑戦するように、異彩を放っている。
1990年にリニューアルされたヴァン ヴェールは、アグレッシブな要素を減らし、フローラル様の香りの幅を広げているが、オリジナルの香りが持つ香りの側面はそのままに残している。
軽やかなグリーンノートからスタートする香りは、まるで春の花々が咲き誇るように、時間とともに豊かに深くなっていく。フレッシュなグリーンノートに爽やかなフラワー様の香りがブレンドされ、ラストにはしっかりとしたウッディ調のトーンに落ち着くヴァン ヴェールはまさにフローラル・グリーン調香水の代名詞である。
春の息吹を身に纏う、Celleerのスピリットを感じる、自立し成熟した女性の春の装いにヴァン ヴェールを。マニッシュなハイファッションにも相応しい香水です。
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